【獣医師監修】余命は?猫の腎不全の原因や症状、治療や予防法について

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この記事では猫の腎不全について、原因や症状、薬や予防法、余命について解説しています。

愛猫が腎不全にならないよう予防したい方や、腎不全になってしまった場合に慌てないためにも、ぜひとも最後まで目を通していただけると幸いです。

猫の腎不全について

猫の腎不全とは、腎臓の中で尿の「ろ過」を行うネフロンと呼ばれる器官が損傷することで、腎臓の機能が正常以下に低下してしまった状態です。

*血液は腎臓の糸球体で濾過され、尿となって排出される

一般的に「腎不全」は「腎臓の機能が50%以上失われた状態」を意味します。

腎不全には、短時間で腎臓の機能が破壊されることが原因となる急性腎不全と、数ヶ月~数年かけて徐々に腎機能が破壊されることが原因となる慢性腎不全の二つのタイプがあります。

しかし、猫の急性腎不全は発生率が非常に少なく、猫の腎不全は基本的に「慢性腎不全」のことを言います。

【高齢の猫で多い】

腎不全は高齢の猫で非常に多くみられ、10歳以上の猫は30〜40%以上の割合で慢性腎不全になっていると考えられています。

猫の腎不全の原因について

猫が慢性腎不全になる原因は、現在のところはっきりとは解明されていません。

一つの仮説では、猫の祖先は砂漠で生きていたため、猫の体は「水分を温存するために少量の濃縮した尿を作れる」ように進化しました。

そして、高度に濃縮された尿を作る過程で、腎臓のネフロンが摩耗していく(使いすぎによる消耗)のではないか、と考えられています。

猫は完全肉食動物であり、他の動物よりもたんぱく質を多く摂取します。そのため、尿素が非常に多く産生されることで腎臓がより多く働かされるからです(尿素は腎臓により体外に排出される)

最近では、猫の腎不全に「モルビリウイルス」が関与している可能性も指摘されていますが、今なお、はっきりとした原因は解明されていないのが実情です。

猫の腎不全の症状

猫が腎不全になると、本来は腎臓から排出されるべき「廃棄物(毒素)」が体内に溜まります。そして、以下のような症状が現れます。

・食欲不振・体重減少・元気消失

・毛づやが悪い・嘔吐・便秘

・口臭の悪化・尿量の増加(飲水量の増加)

・貧血

腎不全が進行すると、腎機能が破壊されることにより、本来、腎臓から分泌される血液を作るホルモン(エリスロポエチン)が出なくなるため、貧血にもなります。

猫の腎不全の検査について

尿検査

尿検査では、尿比重を測ります。尿比重は「尿の濃縮具合」だと思っていただければ分かりやすいかと思います。

尿は腎臓から膀胱に溜まるまでに濃縮(水分が再吸収される)されます。腎機能が低下すると、尿を正常に濃縮できずに薄い尿しかできなくなり、これにより尿比重が低下するのです。

腎機能の66%以上が失われた状態にならなければ、尿検査において尿比重の低下が見られないため、尿比重の低下は腎不全の分かりやすい指標となるのです。

血液検査

血液検査では、「BUN(血中尿素窒素)」と「Cre(クレアチニン)」を測定します。腎不全の疑いがある猫は、これら二項目を測定し、総合的に腎機能が低下しているかどうかを判断します。

また近年は「SDMA」という新しい腎機能マーカーも発見されています。

BUN(血中尿素窒素)

血液検査でBUN値の上昇が見られるのは、腎機能が25%以下に低下した状態です。

尿素はタンパク質を分解する際の最終代謝産物であり、本来は腎臓から排泄されます。

しかし、腎機能が低下すると尿素が正常に排出されず体内に留まります。それゆえ、BUN値は「腎機能が低下すると上昇」します。

しかし、同時にBUN値は「タンパク質の摂取量」や「脱水の程度」、「肝機能」にも影響を受けるため、後述するCre(クレアチニン)の値も同時に測定する必要性があるのです。

Cre(クレアチニン)

血液検査でクレアチニン値の上昇が見られるのは、BUNと同じく、腎機能が25%以下に低下した状態です。

Creは、アミノ酸の1種であるクレアチンが代謝されてできた物質です。これは腎臓から排出されるため、血中のCre値が高いと、腎機能が低下している指標になります。

クレアチニンは筋肉の量に比例します。そのため、大きい雄猫の方が数字が高い傾向があります。

SDMA

最近になって発見された腎機能マーカーです。BUNもCreも、腎機能が25%以下にならなければ上昇が見られないマーカーですが、SDMAは腎機能が60%以下に低下した段階で上昇が見られるため、より早期の発見が可能です。

しかし、子猫の6%程度は高値を示すことが示唆されているため、注意が必要です。

猫の腎不全の治療法

残念ながら、腎臓は一度機能が失われると元に戻りません

これは人の場合でも同じです。人であれば腎機能が著しく低下してしまった場合は、人口透析を行うか、腎臓移植をしなくては生きていくことができません。

猫の腎不全の場合、一般の動物病院では人工透析や腎臓移植は行われてはいません(一部の高度医療施設では行なっている所もあります)

そのため、通常は「腎臓病の進行を遅らせ」「生活の質を上げる」ことが治療の目的になります。

「生活の質を上げる」というのは、「腎不全から生じる痛み」や「苦しみ」を和らげてあげることで、猫が穏やかに暮らせるようにサポートすることです。

このことは特に、腎不全のステージ3(重度)や4(末期)において、重要になってきます。

では以下で具体的にどのような治療を行うか説明して行きます。

①食事療法

猫の腎不全の治療の中で、最も効果が大きいのが食事療法です。

腎不全の猫では、腎機能の低下を遅らせるために「タンパク質とリンの制限」をすることが重要です。

ステージ2や3の猫の場合、通常の食事を続けた猫と比べて、腎臓療法食に変更した猫では「2倍以上寿命が伸びた」という研究結果があるほど腎臓療法食は効果が高いのです。

そのため、腎不全の猫には食事を療法食に変更してもらいます。

*参照:ロイヤルカナン 猫用 腎臓サポート ドライ2kg

②脱水の改善

次に重要なのが「脱水の改善」です。

腎不全の猫では腎機能低下により「尿量が増え・飲水量が増加」します。しかし、飲水欲が低下し飲水量が低下した場合でも尿量は相変わらず多いままなので、結果的に脱水に陥ります

脱水状態を放置した場合、体内に留まる毒素が排出されず、猫の体調に大きな悪影響を与えます。それゆえに、脱水改善のために点滴を行います。

*猫の皮膚をつまんで皮膚の形が戻る時間で脱水を評価する試験(ツルゴール試験)で、皮膚が戻るのに2秒以上かかる時は脱水を示唆しています。

③血中のリン、カリウム、窒素のコントロール

リン

猫の腎不全の約60%は高リン血症になっていると言われます。高リン血症を放置すると、腎不全の進行を早めてしまいます。

そのため、療法食に切り替えている場合でも、血中のリン濃度が高い場合は下げる必要があります。

レンジアレン、カリナール1などは、血中の余分なリンを吸着し、便と一緒に排泄することができます。

カリウム

腎不全の猫では、約30%で低カリウム血症がみられます。低カリウム血症も腎不全の進行を早め、さらには筋炎を起こし痛みを生じさせます。

低カリウム血症の猫では「首が上がらず下を向く」という特徴的な姿勢が見られることがあります。

フィトケア(カリウ補助剤)、点滴へのカリウム添加などでカリウムの補正を行います。

窒素

血中の窒素濃度が高い場合は尿毒症を誘発します。

コバルジン、ネフガードなどの「活性炭」は、猫体内の窒素を吸着し、そのまま便と一緒に排出される効果があります。

④貧血の治療

腎臓からは赤血球産生を促すホルモン(エリスロポイエチン)が作られますが、腎不全が進行すると、このホルモンの産生量が低下します。

また、栄養状態の悪化や尿毒症による赤血球の寿命低下などの影響もあって、腎不全の猫では貧血になりやすく、ステージの進んだ腎不全の猫では、重度の貧血に陥っている場合も多く見られます。

貧血の治療は「エリスロポエチン製剤の投与」や、鉄分や葉酸などの「補給サプリメント(ヘモテクトなど)の投与」を行います。

補足:新薬「ラプロス」について

最近、ラプロスという薬が開発されました。この薬の有効成分はベラプロストナトリムであり、既にドルナーという名で人の医療では使用されていました。

ラプロスには、「腎臓の血流量を増やす」「慢性的炎症を抑える」効果があり、単独で猫の腎機能の悪化を抑える効果があることが証明されています。

また、ラプロスは現時点「ステージ2or3」の猫の腎不全に対してのみ有効性が示されており、ステージ1と4に関しては未だ効果は証明されてはいません。

腎不全の猫の余命は?

愛猫が腎不全だと診断されたからと言って、すぐに亡くなってしまう訳ではありません。

腎不全のステージや年齢によっても余命は大きく変わります。そして、余命を延ばすために何よりも大事なことは、上記で説明した適切な治療が施されるか否か、です。

高齢で腎不全であっても、適切な治療のもとで天寿を全うする猫もいます。また、初期段階の腎不全であれば、食事の変更などで進行を遅らせ、寿命を全うすることも十分に可能です。

逆に、初期段階であっても放置したり、適切な治療を受けなかった場合には、大幅に余命が短くなってしまうのも、また事実です。

猫の腎不全の予防法

①適切な食事管理

腎不全の最も効果的な予防法は、普段から塩分を控えた良質なタンパク質を含む食事を与えることです。

また、日頃から高塩分の餌ばかりを食べ続けた猫は、いざ腎不全になったときに塩分の少ない療法食を食べようとしない場合が多いため(人間と同じように、味の濃いものを好む)、幼い頃から適切な食事管理をすることも大切です。

また、ビタミンDを摂取しすぎないことも重要です。

ビタミンDには、腎臓に悪影響を与える「リンの吸収を助けてしまう」という働きがあるためです。

水分をたくさん摂取することも、ある程度の予防効果はありますが、腎不全の予防に絶大な効果があるわけではありません。

予防に一番大事なことは食事の管理をしっかりすることだと、肝に命じておきましょう。

②定期的な健康診断

猫は「症状を隠すという習性」と「腎不全は緩やかに進行する病気」であるため、飼い主が初期の腎不全に気づくことは、非常に難しいです。

けれども「尿量の増加(飲水量の増加)」は気づくことが可能です。これは自宅での日頃の観察から発見でき、これにより、嘔吐などの症状が出る前に愛猫の異変に気がつくことができます。

また、日頃の健康診断も大切です。

猫の腎不全を早期に発見するためには、尿検査と血液検査が非常に有効だからです。

日頃は全く動物病院に行かない猫でも、7歳から年に1回、10歳からは年に2回の健康診断を行うのが良いでしょう。

早期に腎機能の低下(腎不全)を発見した場合には、餌を療法食に切り替えたり、必要に応じて脱水を改善するための点滴を受けることで、猫の余命は大きく変わります。

まとめ

猫の腎不全についてはこれで以上になります。

猫の腎不全は、多くの飼い主が恐れる病気の一つであるかもしれません。

しかし、猫の腎不全は早期発見・早期予防で重症化を防ぐことが出来る病気でもあります。ゆえに、日頃から定期的に健康診断を行うことが大切です。

もしも、愛猫が高齢にさしかかっており、日頃から健康診断を行なっていないのであれば、一度動物病院での健康診断を受けることをおすすめします。

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