この記事では猫の食物アレルギーの原因や症状、正しいフードによる治療法について解説しています。
愛猫が食物アレルギーを持っている飼い主さんや獣医師が教える猫の食物アレルギーの正しい知識を知りたい飼い主さんは、ぜひとも最後までお読みいただけると幸いです。
Contents
猫の食物アレルギーについて
猫の食物アレルギーは、猫が食べているフードの中に含まれる特定の成分に対して猫の体内の免疫システムが過剰に反応してしまい(アレルギー反応)、その結果として胃炎による下痢や嘔吐、皮膚の痒みによる皮膚炎などの症状が引き起こされる病気です。
猫の食物アレルギーの症状
猫の食物アレルギーでは以下のような症状がみられます
・炎症性腸疾患やアレルギー性の胃炎による下痢や嘔吐
・全身の皮膚のかゆみが原因となる引っかき傷や脱毛
→悪化すると膿皮症や外耳炎などが併発する場合も

*痒みが原因で傷つくまで引っ掻いてしまい皮膚症状が悪化してしまった例
猫の食物アレルギーの原因
猫の食物アレルギーの原因として最も多いのが餌に含まれているタンパク質です。
*アレルギーの原因となるタンパク質の例としては牛肉・豚肉・鶏肉・卵白・卵黄・牛乳などが挙げられます。
また、フードに含まれている小麦・大豆・トウモロコシなどの穀物もアレルギーの原因物質として非常に重要です。
猫の食物アレルギーの治療法
猫の食物アレルギーの治療はアレルギーを引き起こしているフードの成分(アレルゲン)をある程度絞り込むことがポイントになります。
以下で治療のポイントについて説明していきます。
①アレルゲンの含まれていない餌への変更
アレルゲンの特定のためには血液検査も大切です。
しかし、まずは特定の成分が含まれないフードやアレルゲンの原因物質を分解したフードへ変更し、アレルギー反応が出るかどうかをテストすることで原因物質を予測することが効果的な方法です。
②信頼性の高いフードへの変更
食物アレルギーを持つ猫の場合、フードの信頼性は非常に重要です。
ペットフードに含まれている肉のDNAテストを行った研究によると、約40%において表示偽装の疑いがあることが判明しているからです。
更に、ディスカウントストア等で売られている質の悪い格安キャットフードには食品アレルギーの原因になりやすい豚肉を含んでいるにもかかわらずその旨を表示していないなど、愛猫の健康に悪影響を及ぼす重大な偽装を行っているフードも多くあります。
家電量販店や通販で安く買えるという理由でこのようなフードを選んでしまうと、いつまでも食物アレルギーの症状が改善しないという悪循環に陥ってしまうこともあることを知っておきましょう。
治療の為の正しいフードの選び方
それでは、上記のポイントを踏まえながら愛猫の食物アレルギーを改善するための正しいフードの選び方を説明していきます。
①猫本来の食性に合わせたフードへの変更
猫は元来肉食動物であり、穀物を消化・吸収する体内のシステムが発達していません。そのため、体質的に穀物に対してアレルギー反応が起こりやすいという弱点があります。
しかし、市販のキャットフードでは生産コストを削減するため(フードのカサ増しのため)、小麦や乾燥とうもろこしなどの穀物が多く含まれているのが実情です。
そのため、食物アレルギーの猫では、まず初めに食物アレルギーの原因となる穀物を一切排除したキャットフードに変更することが、第一の治療法になります。
穀物不使用(グレインフリー)のキャットフードはどれが良い?
現在、穀物不使用(グレインンフリー)のキャットフードは数多く販売されていますが、安全性・信頼度・品質の高さから、私の動物病院で取り扱っているのは「カナガンキャットフード」です。
食物アレルギーを持つ猫は低品質の原材料にもアレルギー反応を起こしやすく、人工添加物や4Dミート(死亡した家畜動物)、肉類(肉以外の部分、内臓や骨、脊髄など)が含まれていることも悪化要因になります。
カナガンキャットフードにそれらは一切含まれておらず、原材料の全てが人間が食べることが出来るレベルでの安全性が保証されているので、アレルギー持ちの猫にも安心して与える事が出来ます。
そして何よりも、他のグレインフリーキャットフードよりも猫の食いつきが非常に優れていることが、おすすめの理由です。
「穀物不使用のキャットフード、どれにしたらいいかよく分からない」というは、まずはカナガンキャットフードから試してみるのが良いでしょう。
*参照:カナガンキャットフード
②タンパクを最小単位まで分解したフード
穀物では無く、タンパク質が原因となって食物アレルギーが起こる場合、タンパク質が十分消化されないまま体内に吸収されることでアレルギー反応が起きやすくなります。
そのため、タンパク質がアレルゲンとなっている疑いが高い場合は、アレルギーの原因にならないレベルまでタンパク質を小さく分解した上で作られたフードへ変更してみましょう。
タンパク質を最小単位まで分解(加水分解)したものを原料に利用し、タンパク源としてはアレルギーの起こりにくい鶏肉を使用しています。
ヒルズの療法食は多くの動物病院でも処方しているため、安全性や品質は保証されています。
上記の穀物不使用のキャットフードで改善が見られない場合は、低アレルゲン療法食を試してみることをおすすめします。
③猫が食べたことのないタンパク質への変更
①や②を試しても食物アレルギーが改善されない場合は、アヒルや羊肉、馬肉、カンガルーの肉など、今まで愛猫が摂取したことのない新しい種類のタンパク質しか含まれないフードを試してみます。
基本的にアレルギー反応は猫が今まで食べたことのある食べ物に対して起こります。
猫が食べたことのないタンパク質に対してアレルギー反応が起こる確率は非常に低く、牛肉や鶏肉などに対してアレルギー反応が起こる猫では有効な治療方法になりえます。
*参照:ロイヤルカナン セレクトプロテイン ダック&ライス 2kg 猫 療法食
動物性タンパク源としてアヒルの肉のみを使用したキャットフードです。
ロイヤルカナンの療法食も安全性や品質は保証されているため、取り扱っている動物病院は多くありますので、安心して与えて大丈夫です。
フードを変更した際の注意点
なお、アレルゲンの含まれない正しいフードへ変更した場合でも食物アレルギーの症状が改善するまでには4~6週間かかることも多々あります。
フードを変更してから早い段階で「効果が無い」とフードに見切りをつけてしまうと、本当のアレルゲンが分からずじまいになってしまいます。
まずは新しいフードを6週間程度試してみて、改善が見られなければ別のフードを試すようにしてください。
猫の食物アレルギーの検査
動物病院では、猫の食物アレルギーの原因となるアレルゲンを特定することができる血液検査を行うことが可能です。
数十種類のアレルゲンをまとめて検査することが可能ですが、血液検査を行えば100%必ずアレルゲンを特定できるというものでは無いことを知っておきましょう。
アレルギー検査料(値段)は2,3万円〜
猫のアレルギー検査の料金は検査する項目数によって値段が異なりますが、多くの場合は2,3万円〜である場合が多いです。複数項目をまとめて検査する場合はこれ以上の料金がかかります。
検査項目は、飼い主さんとの話の中で獣医師がアレルゲンをある程度絞って決める場合が多いです。
血液検査の中でもアレルギー検査は料金が高額であるため、検査を行いたい場合は事前に料金を動物病院に確認しておくのが良いと思います。
まとめ
猫の食物アレルギーの改善のための正しいフードの選び方についてはこれで以上です。
猫の食物アレルギーの治療はベテランの獣医師でも簡単ではありません。
というのは、フードのどの成分がアレルゲンとなっているのか特定する為には時間と根気が必要だからです。そして何よりも飼い主さんの協力が必要になります。
それでも、時間をかけて根気強く治療を行えば必ず成果が出るのも猫の食物アレルギーの治療の特徴です。
飼い主さんの努力は必ず実ります。治療は焦らず、根気強く続けていくことが大切です。