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猫の心臓病はほとんどが肥大型心筋症
猫の肥大型心筋症とはどんな病気か
猫の心臓病といえば、そのほとんどが肥大型心筋症であることが特徴です。
猫の心筋症には拡張型や拘束型などの種類もありますが、猫での発生率は肥大型心筋症がだんとつで高いのです。
さて肥大型心筋症とは、なんらかの理由により左心室の壁(筋肉)が分厚くなってしまい、左心室の動きが悪くなったり、左心室内の空間が狭くなることで十分に血液を貯めることが出来なくなり、そのせいで必要な量の血液が全身に送り出せなくなってしまう心臓の病気です。
好発猫種について
猫の肥大型心筋症は、メインクーンやラグドール、アメリカンショートヘア、ノルウェージャン・フォレスト・キャット、ペルシャなどで多いと言われています。
しかし、筆者の経験から言えば、ほとんどの症例が雑種猫であったため、全ての症例が遺伝性疾患であるとは言えないと思います。
また、発症年齢は数ヶ月〜十七歳まで報告があり、平均的な発症年齢は5〜7歳とそれほど特異性はありません。ただし発症における性差はあり、雄猫で多く発生します。
猫の肥大型心筋症の症状について
心筋の肥大の程度によって症状は変わる
心筋の肥大が多少生じていても、初めの頃は何ら症状はありません。しかし、心筋の肥大がある程度進行すると、突然症状が出ます。
例えば心不全症状があります。その場合、運動の最中に突然苦しそうにしたり失神することがあります。そのせいで猫は走るなどの激しい運動をしなくなります。
また、空咳や呼吸数の増加など、呼吸器の症状が出ることもあります。
血栓が塞栓すれば急に後肢が麻痺することも
注意したいのは、猫の肥大型心筋症は、突然血栓が動脈に詰まってしまい後肢が麻痺する危険性を秘めている事です。
心筋の肥大が進行すれば左心室に十分な量の血液を取り込めなくなってしまいます。左心室に取り込まれなくなった血液は、左心房に停留し(血液が渋滞してしまう)、その結果として血液が固まって血栓が生じる場合があります。怖いのは、この血栓が血流に乗って流され、全身のどこかの血管に詰まることです。
*動画は血栓が腹大動脈に詰まり、後肢麻痺が生じた猫
例えば、腎臓の血管に血栓が詰まれば急性腎不全になりますし、後ろ足の血管に詰まれば後肢が麻痺してしまいます。血栓が詰まった先の血管では血液供給がストップしていますので、この状態で放っておけば足が腐ってしまいます。しかもこれには、非常に強い痛みを伴います。
もしも後肢麻痺の症状が出た場合には、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
猫の肥大型心筋症の検査方法
症状より肥大型心筋症の疑いがあれば、胸部X線検査、超音波検査を行います。
猫の肥大型心筋症の治療
心肥大が生じているが症状が認められない場合、投薬をしないで経過観察をする場合もあります。この場合は、半年〜一年に一度程度の検査を行うのが良いでしょう。
無徴候ではあるものの左心房の拡大が認められる場合には、投薬を行います。というのもこの場合には上記のように血栓塞栓症の危険性がありますので、血栓をできにくくするための薬(抗血小板薬など)を予防的に使用します。
また肥大型心筋症が進行し、うっ血性心不全の症状が出てくると肺水腫や胸水貯留の防止のために利尿薬の投与を行います。