この記事では猫のマラセチア性外耳炎について、その原因や治療・予防法について解説しています。
愛猫の耳垢が多い、茶色い、湿っていて臭いなどに当てはまる飼い主さんは、ぜひとも最後まで目を通していただけると幸いです。
Contents
猫のマラセチア性外耳炎について
マラセチアとはカビ(真菌)の一種で、猫の耳の中、口の周り、肛門、膣などの正常な皮膚に普通に存在しています。そのため、マラセチアは普段は全く悪さをしません。
しかし、マラセチアは、脂質や湿度のある場所を好み増殖に適した環境になると爆発的に増殖します。
また猫の抵抗力が低下した時にも増殖しやすく、爆発的に増殖したマラセチアが原因となって外耳炎や皮膚炎などを引き起こします。
猫の外耳炎では、原因の70~80%でマラセチアが関与しているといわれています。
猫のマラセチア性外耳炎の症状
マラセチアが原因となる猫の外耳炎では、こげ茶色〜黒色のねっとりとした耳垢、耳の特徴的な悪臭、耳のかゆみ(耳をひっかく)、耳の中の炎症(耳をひっかくことにより出来た傷から細菌感染した場合)があります。
*マラセチアでは、このような黒くねっとりした耳垢が大量に見られる。
猫の健康な耳では、外から耳垢がはっきり見えることはまずありません。
そのため、耳の中に大量の耳垢が見られる場合は、早めに動物病院に連れて行くことが大切です。
猫のマラセチア性外耳炎の原因
耳の中の湿気が大きな原因
マラセチア性外耳炎は、耳の中がジメジメして湿気があるような状態のときに最も引き起こされやすいです。
湿気の多い梅雨の時期や、耳の垂れている猫(スコティッシュホールドなど)は、耳の中の通気性が悪く、マラセチアにとっては好条件のために特に注意が必要です。
体質が原因となる場合もある
ケース1:脂漏症
脂漏症といわれる体臭のある脂っぽいベタベタした皮膚を体質として持っている猫の場合、耳の中だけで無く、皮膚の環境もマラセチアが増殖するのに好条件になります。
このような場合では、皮膚の環境も一緒に改善する治療を行う必要があります。
ケース2:アレルギー体質
また、アレルギー体質の猫の場合も、マラセチア性の病気になりやすいです。
というのは、アトピーやアレルギー性皮膚炎を持病として持っている猫の場合、皮膚の抵抗力が弱く、マラセチアもアレルギーの原因となることがあるからです。
そのため、このような猫では常にマラセチア性外耳炎を引き起こしやすいのが特徴です。
猫のマラセチア性外耳炎の治療法
猫がマラセチア性の外耳炎だった場合、動物病院では以下の手順で治療を行なっていきます。
①耳掃除によるマラセチアの駆除
まずは、耳の中にたまった大量の耳垢を綺麗に取り除くため、獣医師が専門の器具を用いて耳掃除(耳洗浄)を行います。
耳垢を取り除くことで、耳の中で増殖したマラセチアの数をできるだけ減らします。
また耳の中の通気性を良くするために、耳の中に毛が生えている猫に対しては耳の中の毛を綺麗に抜きます
このようにして、猫の耳の中をマラセチアが増殖しにくい風通しの良い環境に変えていきます。
②抗真菌剤入りの点耳薬
耳洗浄後は、抗真菌剤の入った点耳薬を猫の耳に入れ、原因となるマラセチアを殺菌します。
マラセチア性外耳炎では、この①と②の治療を短期間で繰り返し行います。
一連の治療は一度きりでは治りません。完全にマラセチアを駆除し外耳炎が治るまでは根気強く繰り返し通院する必要性があります。
猫のマラセチア性外耳炎の治療費用
上記のように、マラセチア性外耳炎の治療の場合は耳掃除と点耳薬での治療がメインとなるため、高額な治療費用はかからない場合がほとんどです。
病院によっても異なりますが、初診であれば受診料・耳掃除と点耳薬代金で3000〜5000円程度でしょう。
2回目以降は耳掃除代金と受診料で2000円程度の場合がほとんどです。
猫のマラセチア性外耳炎の予防法
猫のマラセチア性外耳炎は、飼い主さんの意識次第で予防することも可能です。
マラセチアが増殖する環境を作らない
マラセチアはもともと体に普通に存在している常在菌です。
しかし、増殖しやすい環境になってしまった場合はマラセチアの増殖が起こり、耳の中に液体や耳アカが大量にたまると、それを栄養分にしてさらに増え続けていきます。
そのため、この病気を予防するには第一にマラセチアが増殖する環境を作らないことが一番重要です。
そのための方法として、定期的な耳のお手入れによる耳垢の除去や、耳毛のカットによる通気性の改善などを常に行うことが大切です。
脂漏症やアレルギー性皮膚炎の改善
なお、体質として脂漏症やアレルギー性皮膚炎を持っている猫の場合は、まずその基礎疾患に対する治療や体質改善が必要になります。
マラセチア性外耳炎を治す手助けとして、脂漏症の子に対しては脱脂作用の強い二硫化セレンの入ったシャンプーや、抗真菌剤を使うことで症状を改善させていきましょう。
また、アレルギー体質の子の場合は、内科的に薬で炎症を抑えたり、アレルギー改善用のフードを食べさせることにより皮膚に抵抗力をつけさせ、マラセチアの増殖を出来る限り抑えます。
体質に合った根本的な治療と共に、通常のマラセチア性外耳炎の治療をおこない、上手にコントロールすることが悪化しない為の予防にも繋がっていきます。
まとめ
猫のマラセチア性外耳炎について、ご理解いただけましたか?
猫のマラセチアは動物病院では頻繁に見かける症例です。
ほとんどの場合で綺麗に完治できる病気でもありながら、放置し悪化した場合には耳の奥に後遺症が残る場合もあります。
耳の治療は高額の治療費はかかりません。
そのため愛猫の耳垢が多い、耳を頻繁に痒がるなどの異変が見られたらできる限り早めに動物病院に連れて行ってあげてください。