【獣医師監修】高齢猫の嘔吐の原因に!猫の慢性膵炎について

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この記事では、高齢猫の嘔吐の原因として多い慢性膵炎について詳しく解説しています。

猫の慢性膵炎について

膵臓からは、タンパク質を分解する「トリプシン」や、炭水化物を分解する「アミラーゼ」、脂質を分解する「リパーゼ」などの酵素を含む膵液が分泌されます。

何らかの原因により、膵液の流れが悪くなったり、膵液の通る菅が詰まったりしてしまうと、膵臓内で消化酵素が活性化されて膵臓自体を消化してしまい、膵炎が生じます。この、膵炎の状態が慢性的に続くものを慢性膵炎といいます。

*図のPancreasが膵臓であり、膵臓で作られた膵液(消化酵素)は十二指腸につながった膵管(Pancreas duct)から放出される。

さて、中高齢の猫において「原因不明の嘔吐の増加」が見られる場合がしばしばありますが、この嘔吐の増加の原因として「慢性膵炎」が隠されていることがあります。

膵炎と聞くと、人間の膵炎のように激烈な症状が出るような印象がありますが、猫で多い慢性膵炎ではそのような激烈な症状は出ません。そのため、症状から診断することは非常に困難であり、ベテランの獣医師であっても見逃してしまうケースも多くあるのが、猫の慢性膵炎の特徴なのです。

猫の慢性膵炎の症状

猫は慢性膵炎になると、腹部の痛み、それに伴う食欲不振、嘔吐、などの症状が主に出ます。

また、膵臓からは血糖値を低下させるインスリン、反対に血糖値を上昇させるグルカゴンなどのホルモンを分泌し、血糖値を適切な範囲に保つという重要な役割があります。

慢性膵炎が長期に及ぶと、膵臓自体が破壊されてしまい、この血糖調整機構が正常に働かなくなることがあり、結果として低血糖や糖尿病などを併発することがあります。

猫の慢性膵炎の検査

人や犬では、膵炎のマーカーとして「血中アミラーゼ」や「血中リパーゼ」が用いられますが、猫の場合は参考になりません。猫は慢性膵炎であってもこれらのマーカーの感度が低いため上昇が見られず、また肝疾患や腎疾患、腸疾患でも上昇してしまうため、膵炎のマーカーとして適しません。

猫の慢性膵炎の場合では、血中の猫膵特異的リパーゼ(Spec fPL)値をマーカーとして測定します。

血中のリパーゼは、膵リパーゼ以外にも、胃リパーゼ、肝リパーゼなど複数の種類があります。猫膵特異的リパーゼは、このうちの「膵リパーゼのみ」を測定するのです。

猫膵特異的リパーゼの値が高い場合は「膵炎と診断」されますが、猫膵特異的リパーゼの値が低いからといって「膵炎では無い」とは診断を下すことは出来ないことに注意しなければなりません。

というのも、猫膵特異的リパーゼは値が上昇しにくく、実際に慢性膵炎であっても猫膵特異的リパーゼの値が正常値である場合もあるからです。

猫の慢性膵炎の治療

猫の慢性膵炎では原因が明らかにできない場合が多く、治療は痛みの管理、点滴による栄養補給などの対症療法がメインになります。また猫の慢性膵炎では、糖尿病や肝疾患、腸疾患を合併していることが多く、それらの合併症がある場合には、両方の治療を行うことが大切です。

嘔吐を抑える

度重なる嘔吐は脱水や栄養不足を助長し、膵炎を悪化させます。そのため、制吐剤によって嘔吐を抑えます。

制吐剤にはマロピタントなどの薬が使われます。マロピタントは腹痛も緩和させる効果も期待でき、猫の慢性膵炎で有用です。

輸液

慢性膵炎の猫では、嘔吐や下痢によって水分を失い脱水が起こります。そのため、輸液によって水分の補充を行い、膵臓に適切な血流を確保し、回復を促します。また嘔吐が続くとミネラルバランスも崩れてしまうため、それも点滴により是正します。

栄養管理

かつては膵炎に対して24〜48時間の絶食を行うべきという考えがありましたが、現在では人の医療でも、できるだけ早く口からの栄養補給(経腸栄養補給)が推奨されています。

特に猫の場合は栄養不足が長期化すると「肝リピドーシス」を起こす可能性が高まるため、絶食は大変危険です。

慢性膵炎の猫で食欲の低下や廃絶が見られる場合、注射器を使った強制給餌や、栄養カテーテルを鼻や食道、胃に設置して必要な栄養素を摂取します。鼻カテーテルは麻酔をかけずに設置できるため、治療初期の体調が悪い時期の栄養補助に適しています。

痛みの緩和

猫は犬よりも明らかな痛みを訴えることは少ないですが、鎮痛剤の投与により症状が改善することが多いです。オピオイド系鎮痛薬のレペタン、フェンタニルパッチなどが使われます。

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