この記事では猫のペット保険の必要性と、正しいペット保険の選び方について説明しています。
愛猫のペット保険に入ろうか迷っている飼い主さんや、どのペット保険に入るべきか分からない飼い主さんはぜひとも最後まで目を通していただけると幸いです。
Contents
猫のペット保険とは?
ペット保険とは、月々定額の保険料を支払っておくことで、飼い猫が病気やケガをし動物病院で治療を受けた際に、保険会社から一定の保険金を受け取ることができるペットの医療保険です。
猫の医療費は100%自己負担
人には健康保険制度があり診療費の3割を自己負担するだけで医療を受けられます。
しかしながら猫の場合は人と違い、ケガや病気で動物病院に行った際にかかった医療費の100%を全額自己負担しなければなりません。
猫の医療費は時に100万円を超えることもある
動物病院での診療は「自由診療」という制度のため、国で決められた治療費というものは存在せず、動物病院毎に治療料金が異なります。
最近の動物医療は技術の進歩もあり、MRI検査や高度な技術の手術を行う場合もあります。
そのため、高額なケースになると年間で何十万円も、時には一つの病気に対して100万円を超える医療費がかかることがあります。
このように、万が一飼っている猫が大きな病気(悪性のガンなど)を患ってしまった場合に役立つのがペット保険です。
猫のペット保険の必要性
実際、飼い猫がいつも元気で走り回っている姿を見ると「うちの子は健康だし、保険は必要無いかな」と思いがちです。
しかし、猫の場合は高齢になるほど病気のリスクが一気に高まります。
猫は高齢になると腎不全のリスクが一気に高まる
猫は高齢になると病気のリスクが一気に高くなりますが、中でもとりわけ発生数が多いのが猫の慢性腎不全(腎臓病)です。
慢性腎不全になってしまった場合は定期的な点滴通院が必要になるため、医療費は高額になりがちです。
重度腎不全まで進行してしまった場合は定期的な通院に加えて入院が必要になる場合も多く、中には年間100万円以上の医療費がかかる場合もあります。
犬の場合は犬種に応じてなりやすい病気が決まっており、年齢というよりも犬種ごとに保険料が決められていますが、猫の場合は高齢になる程病気のリスクが高まるため、ペット保険の保険料も年齢が高まるにつれて高額になっていきます。
猫のペット保険加入時の注意点
過去の病歴によっては加入できない場合もある
猫の保険の必要性を認識し、いざペット保険に加入しようとした場合、過去にかかった病気(病歴)によっては保険に加入できない場合があります。
以下に加入できない場合の多い病気を列挙しておきます。
*悪性腫瘍(ガン)、腎不全、糖尿病、重度の外耳炎、脳・神経系の疾患、気管虚脱、肝硬変・肝不全、ホルモン性疾患、膵外分泌不全、猫免疫不全ウィルス感染症(FIV)、先天性心疾患(VSD/PDA/AS/PS/TOF)、炎症性腸疾患、脊椎版ヘルニア
また加入できない病歴は保険会社によって多少変わるので、自分が加入しようとしている保険会社であらかじめ確認する必要性があります。
猫の年齢によっては加入できない場合もある
飼い猫が若齢であればほとんどのペット保険に加入できますが、猫は高齢になる程に加入できる保険は減ってきます。
【例:各社の加入できる猫の年齢】
保険会社 | 加入できる年齢 |
アニコム | 7歳11ヶ月まで |
アイペット | 12歳11ヶ月まで |
ペッツベスト | 16歳11ヶ月まで |
猫におすすめのペット保険
現在、猫が加入できるペット保険は様々な種類があります。
すべてのペット保険をここで紹介することは、かえって飼い主さんを混乱させてしまう可能性があるかと思いますので、猫の飼い主さんにおすすめできる二つの特徴的なペット保険(アイペットとペッツベスト)をご紹介したいと思います。
猫におすすめのペット保険①アイペット
アイペットは多くの動物病院と提携しており、保険金請求時のトラブルも少なく獣医師としても飼い主さんにおすすめできるペット保険です。
実際に私が診ている猫の飼い主さんもアイペットに加入している方も多くいます。
メリット:保険金請求を自分でする必要が無い
アイペットの1番のメリットは保険金の請求が非常に楽なことです。
提携している動物病院であれば、動物病院での治療費のお支払い時に飼い主さんは「自己負担分のみ」を動物病院に支払えば良いからです。
例えば、治療費として1万円が実際にかかり、保険の補償内容が70%補償であれば飼い主さんは3000円のみ動物病院に支払えば良いというものです。保険対象分の7000円は動物病院が後日、飼い主さんの代わりにアイペットに請求します。
治療が全て終わった後、飼い主さんが領収書などを揃えて保険会社に保険金を請求し、保険適応分の金額を保険会社が飼い主さんに返金するシステムではないため、わざわざ書類を記入したりする必要性が無い点がアイペットの1番のメリットです。
デメリット①:保険料が高い
アイペットの保険料は全ペット保険の中でも一番高額の部類です。
例えば12才の猫の場合、年間の保険料は約9万円(正確には91,220円)と決して安いとは言えない金額です。また13歳以上の保険料は明記されていませんが、これ以上更に上がります。
当然、万が一の場合を考えると手厚い補償と保険金請求の楽なアイペットが良いでしょう。けれども猫が高齢になり、年間10万円以上になる保険料の負担を考えて、アイペットから他社のペット保険に変える飼い主さんもいます。
「年間10万円の保険料を支払うくらいなら、その分貯金しておいて万が一の病気の時に備えておきたい」
と考え、解約してしまう飼い主もいらっしゃいますが、保険料が高額なのでそれもしかたのないことのように思います。
デメリット②:12才までしか新規加入できない
アイペットでは猫の年齢が12才11ヶ月以内までしか新規加入できません。
後述するペッツベストでは16才まで新規加入可能であるのと比較すると、アイペットはその点融通が効きません。
加入するなら「うちのこプラン」
アイペットに加入しようと思った場合、アイペットでは「うちのこライト」プランと「うちのこ」プランの二種類のペット保険のプランがありますが、猫の場合は「うちのこプラン」に加入したほうが良いでしょう。
というのも、「うちのこライト」では「手術と手術に伴う入院」のみが補償範囲であり、高齢の猫で多発する慢性腎不全による通院は適応外だからです(腎不全は治療のために手術を行うことはまずありません)。
また猫は手術が必要な病気になる確率よりも、長期の通院が必要になる病気になる確率のほうがはるかに高く、それは高齢になる程リスクが高まります。
犬では手術を行う病気になるリスクは猫より高いと言えるので、どちらかといえばうちのこライトプランは犬を飼われている飼い主さん向けのプランだといえるでしょう。
猫におすすめのペット保険②ペッツベスト
アイペットとは対照的に、保険料がペット保険の中でもかなりリーズナブルな値段であるのがペッツベストです。
ペッツベストは知名度はあまり高く無いですが、最近では動物病院でもおすすめするところが増えてきています。
メリット①保険料が安い
ペッツベストのメリットは何よりも保険料の安さです。
例えば12才の猫の一年間の保険料を比較してみましょう。
保険会社 | 12歳の猫の年間保険料 |
アイペット(うちのこプラン70%補償) | 91,220円 |
ペッツベスト(ファーストプラン80%補償) | 34,920円 |
このようにアイペットの保険料と比較してみると年間5万円以上の違いがあります。
ペッツベストでは保険料をグッと抑えることが出来るため、飼い主さんの金銭的負担を軽減しながら万が一の病気に備えるということが出来ます。
メリット②16才まで加入可能
猫は16才まで加入できることもおすすめできる理由です。
前述したアイペットが12才までの新規加入であり、最も病気のリスクが高まる13才以降は新規加入できないばかりか、保険料もグッと上がります。他にも知名度の高いアニコムは7歳までしか加入できません。
ペッツベストは16才まで新規加入でき、かつ保険料の上昇も緩やかです。
この点からもペッツベストが「本当に猫と飼い主さんのことを考えている」と評価できると私は思います。
メリット③補償額が80%と高額
ペッツベストの補償額は80%と高額です。
他社の補償額は最高でも70%までであるところが多いのに対し、ペッツベストは更に10%上乗せした80%補償です。
そのため、飼い主さんの自己負担額は「治療費の20%+免責金額」のみでよくなります。
ただし、年間の補償限度額と一回の病気や事故に対する補償限度額、また一回の病気・事故に対する免責金額の設定はあるため事前に知っておく必要があります。
プラン | 補償の割合 | 年間の補償限度額 | 1回の事故・病気に対する保険金 | 補償内容 | 1回の事故・病気に対する免責金額 |
ファースト | 80% | 年間100万円まで | 50万円まで | 入院・通院・手術 | 7500円 |
ベーシック | 80% | 年間50万円まで | 25万円まで | 入院・通院・手術 | 20000円 |
デメリット①特定疾病になった場合は限度額設定あり
猫が、あらかじめ保険会社に指定されている特定の病気や怪我になったばあいは補償限度額があります。
プラン |
特定疾病 |
特定障害 |
妊娠・出産が原因の疾病 |
先天的・遺伝的な傷病 |
ファースト | 2万円(1疾病) | 1万円(1障害) | 2万円(1疾病) | 2万円(1傷病) |
ベーシック | 1万円(1疾病) | 5000円(1障害) | 1万円(1疾病) | 1万円(1傷病) |
・特定疾病:猫エイズ、猫伝染性腹膜炎
・特定障害:じん帯の断絶や損傷・肉球や爪の裂傷・切り傷・刺し傷・有毒物質や異物を飲み込んでしまった場合
・先天的または遺伝的、さらに発達異常が原因で病気やけがをした場合
デメリット②自分で保険金の請求を行う必要性がある
ペッツベストでは保険金の請求を自分で行う必要性があります。
保険金の請求は決して難しくは無いですが、自分で請求するのがめんどくさいと感じる飼い主さんもいらっしゃいます。
ただその辺は、ペッツベストは「飼い主さんにできることは自分でしてもらう」ことで保険料の安さを実現していますからペッツベストの保険料の安さを考えると仕方の無いことだと思います。
リーズナブルな保険料なのにここまでの補償内容を実現している点、実際に私が診ている飼い主さんでの評判も悪く無い点から、ペッツベストは飼い主さんにおすすめできるペット保険です。
アニコムについて
アニコムはおすすめできない
ペット保険は全然詳しくないという飼い主さんの中でもアニコムは知っているという人は多いのではないでしょうか?
多くの動物病院と提携し、現在ペット保険のシェア数は業界ナンバーワンです。
以前は私的にも飼い主さんへのオススメ度ナンバーワンのペット保険だったのですが、最近は度重なるルール改正・改悪により問題も多くなってきています。
「ペット保険詳しくないからとりあえず大手のアニコムでいいや」と何も考えずに加入してしまう前に、飼い主さんにまずアニコムについて知っておいて欲しいことを書いておきます
利益拡大のため?ルールの改悪続き
以前からアニコムの保険料は高額でしたが、高額な保険料に見合った充実した補償内容でした。以前は「90%補償」や「回数無制限(年間の利用回数無制限)」といった手厚い補償だったのです。
加えて保険金請求の簡略化や、充実した付加サービス。そのため、高額の保険料にもかかわらず多くの飼い主さんから支持され、シェアを獲得していったと言えるでしょう。
また実際に、飼い猫や犬が「ほぼ毎日通院する必要があるような病気にかかってしまった」飼い主さんにとっては、アニコムは非常に大きな助けになってくれる、いわば最強のペット保険でした。
ですが、ここ数年でアニコムは自社の利益拡大のために「90%補償の撤廃」、「回数無制限の撤廃」を行い、それぞれ「70%補償を限度」、「年間20回までの利用制限」を設けました。
しかも新規加入者だけでなく、今まで長年アニコムに加入していた者にまでその新ルールは適応されたのです。そして、これだけの補償内容の改悪を行ったにもかかわらず保険料は高額のままです。
個人的な見解として言いたいこと
アニコムはペット保険ナンバーワンのシェア数を獲得しました。
けれども多くのシェアを獲得し、ペット保険業界では「絶対的ブランド力」を獲得してから「補償内容を改悪する」というのは今までアニコムに加入していた飼い主さんを裏切る行為ではないでしょうか。
当然、「事業を拡大し、利益を最大限にするための企業的な戦略」だとか、「ルールを守らない飼い主が悪用するなどの回数無制限による弊害」などというのも理解できます。
ですが、重病にかかり高額な医療費を負担している飼い主さんを見捨てるようなルール改正をしたことは僕たち獣医師にとっても信頼を損なうことだったと思います。
今後も補償内容を改悪する可能性があるという点から、アニコムは例え現在知名度ナンバーワンの大手ペット保険だとしても、猫の飼い主さんにおすすめできるペット保険とは言えません。
まとめ
猫におすすめのペット保険に関しては以上になります。
私は「飼い猫のためにもペット保険に加入しよう」と飼い主さんが思うだけでも素晴らしいことだと思っています。
ただ、実際には猫の飼い主さん皆が「お金が十分にあって、いざ病気になり高額の医療費がかかっても全然大丈夫」という人ばかりではありません。
いざという場合に備えて少額でもペット保険に加入しておけば、万が一大きな病気になり高額な医療費がかかってしまう事態になっても補償を受けられます。そしてそれは、飼い主さんの金銭的な負担を軽減するだけでなく、猫が十分な医療を受けるためでもあるのです。
もしもペット保険に加入しようか迷っている猫の飼い主さんがいましたら、これを機に少額でもペット保険に加入することを検討してみてはいかがでしょうか。